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テツの多言語習得への道のり(その六:29-現在)

2010年3月14日日曜日

なぜ日本?

理由は二つ。まず、台湾人と日本人のハーフとして、やっぱり自分も東洋の厳しい社会で通用するか確かめたかった。でも、それよりももっと大きな理由は、僕は自分が大学で学んできた「生物学」と、自分が持っている一番強い武器である「語学力」の間に何らかのつながりが欲しかったからなのだ。だって、普通に北米で生物学をやってたら、英語だけで十分だもん。だから、ヒントを得る為に、一番アジアの中で科学が進んでいる日本に来た。最初のプランだと、ここで2−3年ポスドク(post-doctoral fellow)をやって、ネットワークを築いた後に、バイオテク会社が沢山ある米国の西海岸でも2−3年やろうとおもった。最後は勿論、カナダに戻って自分の研究室を開く。ただ、「予定は未定」とよく言ったもんだ。
僕は今年の夏で、満7年日本にいる事になる。



日本で仕事を始める事は、語学の面でも大変だった。僕みたいな人にとってもね。やっぱり、仕事となれば、日常会話レベルではまかなえない課題がいっぱい出てくるのよ。敬語だとか、文章の読み書きとか、また、完全に日本語で科学用語をマスターするのにも時間がかかった。そもそも、日本語で生物学のセミナーなんて、聞いた事もないし。また、宇宙語が始まったよ〜って感じだった。

実際に日本語で文章を書くのも、日本に来てから学んだので、本当に最初は死にそうだった。当初は、日本学術振興会の奨学金で日本に来てたので、定期的に和文でレポートを書かなければならなかったのだ。これが本当に億劫だった。日本人の同僚たちが一瞬で書ける書類でも、僕は数時間かかったりしてた。でも、いまとなって思うと、本当にためになった。あの時の苦労があったからこそ、いまも完全に日本語の書類やメールでも問題なく仕事ができるのだと思う。

実は、語学に関して、日本に来てから他にも運のいい事があった。それは、研究室に二人の中国大陸の学生がいた事。僕が彼らと毎日北京語で喋れたお陰で、ちょっとカナダで錆かけてた北京語も磨く事が出来た。

研究室での生活以外にも、言葉を学べる・維持できるように、僕は東京で開催されるミートアップという集まりに積極的に参加してきた。 ミートアップに関しては、また、別の記事で紹介します。 一番頻度高く開催されているのが、スペイン語ぺらぺらのユウコさんのスパニッシュミートアップ。でも、僕が最初に参加したのはフレンチミートアップだった。オーガナイザーである、カズさんも言語の天才です。実は彼、フレンチ以外にも、イタリア語、ポルトガル語、ドイツ語、英語などのミートアップも取りまとめている。カズさん、ユウコさん!いつもありがとう!

という事で、研究室では、日本語、中国語、英語を常に使い、外でも言葉を維持できる場面にいつも身を置くようにしていた。ただ、やっぱり研究職を続ける事は、基本的に英語だけでもやって行ける事を意味する。それでは、とても満足できなかったので、もっと根本的に、自分の職業と言語を融合できるようにしたかった。そこで思いついたのがビジネス。でも、全く企業経験なしで、ずっと研究しかやってこなかった僕は、いきなりビジネス界に飛び込むのは不安だった。

経営学(MBA)はいかが?

しまった!再び貧乏学生へ戻れと自分が自分に説得し始めた!32才で!いや〜、あまりいいアイデアじゃないよ、、、と若干弱気の自分が賛成したくなかった。だって、色んな人の話や、MBAを紹介するウェブサイトなどによると、MBAというのは、企業経験のある人がやるべきことじゃん!、、、うん。

でも、強気の自分の心は既に決まってた。世の中の皆さんの温かい助言は感謝しますが、やりたい事が現れると、止められなくなるのが、このテッちゃんの性格。幸い、研究の指導をしてくださっていた恩師も、自分の両親もMBAをやる事に関しては、サポートをしてくれた。

ポスドクはやめたくなかったし、いい英語のプログラムを希望してたので、本当は教室でクラスメートと一緒に勉強したかったけど、最初はオンラインの通信講座形式のMBAプログラムを検索した。でも、いつもの通り、諦めきれない僕に、幸運の女神が微笑んだ。むしろ、超ナイススマイル!何と、ググっているうちに、マギル大学のホームページにたどり着いたではないか!そう、僕の母校である、あのマギル大学!ただ、目の前にあるのは、マギルMBA「ジャパン」プログラムのホームページ!最終的には、僕が知る限り、当時日本でフルタイムのグローバルMBAプログラムを英語でやるのなら、選択肢は二つしかなかった。一つがマギルで、もう一つはテンプル大学(米)。カナダの大学は100校ちかくあるのに、唯一日本に分校があるのがマギルで、それがMBAだと言う。何と言う強運。あとは、夜間コースとかであれば、やれるぞ!でも、結果はもっと良かった。週末のプログラムだった。いや〜、ドラマの台本を読んでるみたいだよ。

すぐに申請して、なんとか合格して、あとはやるだけ、、、って簡単そうに言ってしまったけど、ポスドクとフルタイムのMBAを両立させるのははっきり言って、地獄そのものだった。数百万円を払って、自ら飛び込む地獄ね。でも言語とあまり関係ないからMBAの経験談は、割愛するよ。

研究オタクからグローバル製薬研究開発マネージメント

MBAも2年目に入ったとき、そろそろ研究室を出て、ビジネスの世界に飛び込む事を決心した。その時点で、興味をもったのは4つの業界。1)投資銀行、2)コンサルティング、3)ベンチャーキャピタル、4)製薬。MBAでは金融専攻をしたので、投資銀行は妥当なチョイスなのだが、生物学の博士号が完全に無駄になりそうだった。また、これは2007年、バブル崩壊寸前の話だったので、本当に金融業界に入らなくてよかったよ。コンサルという選択肢なら、確かに少しは博士号が役に立ったかもしれないけど、やっぱりMBAの方が優遇されるだろう。でも、投資銀行にしても、コンサルにしても、収入に関しては絶対に期待は出来たと思うけど 、人生を会社に売るはめになりかねなかったので、却下。ベンチャーキャピタルは凄く魅力的なオプションだった。それは、投資の対象となるポテンシャルのあるバイオテク会社の評価をするのにも、投資家を説得して、投資の資金調達するのにも、PhDとMBAは両方とも大きなプラスになる。しかし、当時もいまも、日本のベンチャー業界は非常に景気が悪い。となると、あとは製薬業界。勿論これが一番ロジカルで、ベストなチョイスであると思った。研究開発に必要な科学的思考回路と、ライセンシング・パートナリング・合併など、様々なビジネスノーハウも必要。一番バランスよく自分のバックグラウンドを活かせる業界だと思った。

じゃあ、次に決めるのは、外資に行くか、内資に行くか。普通だったら、英語が出来るという事で、みんな外資に行けという。でも、僕は違う。僕は、英語が不自由な人が多い内資の会社だからこそ、僕の活躍の場がいっぱいあると考えた。また、どの業界でもそうだけど、日本の会社は、既に日本の市場だけでは生きて行けない為、海外進出を活発に行っている。ましてや、海外と言っても、英語だけじゃないでしょう。みんなが注目しているお隣さんでは、中国語が歓迎される。一方では、外資の会社となると、勿論日本法人は所詮子会社であり、任せてもらえるのは日本の市場。僕にとって、そんな中に飛び込んで、日本人と日本語で戦うのはあまり聡明ではないと思った。だから、内資で決まり。

ここからは、比較的簡単に一社に絞れた。面接は英語でも良いと言われたが、意図的に僕は毎回日本語で面接を受けた。それは、僕にとって日本語は第三ヶ国語であるのにも関わらず、 サイエンティフィックのプレゼンも含め、どのような専門知識でも、日本語で対応できる事を面接官に訴えたかった。結果としては、採用されたので、安心してもらえたんだろうね。

という訳で、僕は大学の研究室で基礎研究をしていたとこから、一瞬にして製薬会社の全グローバル研究開発部門のR&Dマネージメントの仕事に携わる事になった。言うまでもないと思うけど、この変化は劇的だった。でも、あいも変わらず、いい人たちに恵まれた。本当に尊敬できる上司から、様々な場面で支援してくれる同僚たち。

ちなみに、また面白いお話をしよう。オフィスに入った初日の出来事だった。僕の向かい側に外国人の方が座っていて、僕に挨拶をしてくれた。しかし、彼は「hi」と言わずに、「bonjour」と来た。それも、まぎれもなくケベック特有のアクセントで。よりによって、日本の会社に入って、目の前に座っているのがケベックの人!こんな偶然ってある?!でも、これだけで驚いては困る。彼の名前はフランク。なんと、僕と同じケベックシティーに長く住んでいて、同じラバール大学で博士号をとったひとなの!それも彼は、僕が行く4年位前に、同じ研究室で研究をしていた!そして、我々の共通の知り合いがわんさかいる中、彼の親友であるジャンイーブは僕の博士論文をレビューした審査員の一人!どう?不気味な位あり得ないでしょう?!

現在も僕は日本に住んでいて、この会社で自分の科学のバックグラウンドと経営学の知識をバランスよく使って仕事をしている。また、この会社は非常にグローバル意識が強く、既に米国と欧州には大きな拠点があり、他にもどんどん進出している。勿論中国も強化するだろう。実は僕も先週北京に行ってきたばかり。だから、僕は日本人の同僚とは勿論日本語で話すけど、アメリカ人や、イギリス人とは英語で、中国人とは北京語で、フランクとはフランス語。早くスペイン語やポルトガル語とかを使うため、南米進出してくれないかな!

以上で、6部に分けた、自己紹介はここまで。そろそろ僕の言語習得に関しての考え方や、経験を紹介しますね!


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7 comments:

I am Mattimus. さんのコメント...

Yeah! Tetsu, I'm ready as I'll ever be. But I'm not gonna play softball with you just because I got a shout-out, no sir. Time for a tough question.

Have you ever considered dropping your academic/professional duties and just focusing on languages full time? That is, quitting your job and becoming a translator/interpreter, meaning (I'm sure) a huge pay cut, but 100% of your time could be spent on languages?

Given your biography, I'm sure the answer is no, but hey, I ask the big questions. What can I say, I like to party.

Also (I never thought I'd say this):

BRING ON THE CLAP!

Chiro-kun さんのコメント...

流石は哲さんですね!ポストドックしながら同時にいままで勉強してきた外国語をもっとレベルアップするなんて、凄すぎる!

でもやっぱり「作文力」とは「日常会話」とは全く関係ありませんね。私はベンガル人ですがベンガル語で文章なんか全然かけません。哲さんの気持ちはなんとか分かります(でも今はやっぱり違うですね。ブログも日本語で旨く書いてますし)今まで書く必要もありませんでしたし、怠け者の私にはどうしようもないでしょう。

これからはCLAPの紹介ですね。非常に楽しみです!

Chiro-kun さんのコメント...

質問攻めですみませんが、どうしても聞かなければならないことがあって気が治まらないです。哲さんの経験からして、やっぱり日常会話をマスターするには勉強している外国語のネイティブスピーカーがそばにいなければなりませんでしょうね?そこで質問があります:ネイティブスピーカーがいなくても日常会話のレベルくらいは一人でできるんでしょうか。

例えば北京語と台湾語は漢字圏外の外国人である欧米人にとっては相当難しいと思います。そういう人物には漢字を覚えずにペラペラ喋れるのは無理なんでしょうか?(勿論語学学校通わずに独学して)。哲さんはどう思う?

Tetsu さんのコメント...

Matt!

Keep'em coming dude. I love your comments and straight questions.

I do not want to be a translator. Possibly an interpreter, but even that will only be for money, not because I like it.

I want to use my languages in my career, rather than build a language-specific career. You know what I mean?

Tetsu さんのコメント...

Chiro-kun

的を得ているとてもいい質問、本当にありがとう。考えさせられたよ。

そうね、ネイティブがいた方が良いのは当たり前だけど、いなければ駄目かというと、分からない。相当強い意志が必要でしょう。僕の場合は、全部ネイティブから習った。

しかし、一つ言いたいのは、僕は自分の国にいても、自らネイティブを探し出します。スペイン語も、南米に2週間行って学び始めたものの、上手くなったのは、カナダで作ったネイティブの友達のお陰だとおもう。

ネイティブじゃない場合は、相手が自分の母国語を喋らなければ、いいと思うけどね。

Chiro-kun さんのコメント...

なるほど、「強い意志」ってそれはどの分野でも不可欠なものですね。「興味」と「努力」をバランスよく利用し続けると人にはなんでもできるはず。

早速回答してくれてありがとうございます!これからも新しい記事・ポスト楽しみにしております!

Uncle Polyglot さんのコメント...

今回もすごく面白い内容で、興味津々で読ませていただきました!

テツさんはポストドクから直接MBAに進まれたのですね。

時間的にも経済的にも大きなコミットメントなので、大変な決断だったと思いますが、その決断のおかげで今のご活躍があるのですから、まさに「虎穴に入らずんば虎子を得ず」のことわざを体現されているわけですね!

そして、今のお勤め先の面接で、すべての面接を日本語でこなされたという記述を読んで、テツさんの勇気に改めて感服しました。

何事でも大切な節目において勇気を持って臨むというテツさんの姿勢は、とにかく尊敬します!

さて、この次からはテツさんのCLAPに関する記事が始まるとのことなので、今からとても楽しみにしております!

Many thanks for your intellectually stimulating post as always.

Talk to you again soon!

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